写真家 佐藤岳彦 Takehiko Sato

Tef Tef Life Blog 生命の織り成す世界

囮目の目纏

メマトイ


 涙を舐めるメマトイ。お腹はすでにはちきれんばかりです。

 この日は二人で山に入るなり、メマトイ軍団の襲撃を受けました。これは御誂え向きとばかりに片割れを囮にしてさっそく撮影開始です。普段なら目にもレンズにも纏わりついて至極鬱陶しい存在なのですが、粘っこく撮影してると少しばかりの情といいますか、愛着というものがわいてきます。やはり濃密な時間を共に過ごしてしまうとダメなんですね。

 写真の囮目は、どこか伏し目がちで憂いの目に見るかもしれませんが、単に下睫毛に止まるメマトイちゃんが見たいのです。決して囮を無理強いされて悲しげなわけではないので悪しからず。むしろ言いだしっぺは囮目の方でやる気が満々なんですから。

 ちなみにメマトイというのは目に纏ってくるハエの総称でしてショウジョウバエ科やヒゲブトコバエ科、イエバエ科、キモグリバエ科などの数科に渡ってメマトイという名が使われています。目にやってくるのは涙からタンパク質を摂取するためなどとも言われてますが、詳しくはわかってないようです。

 またメマトイは東洋眼虫Thelazia callipaedaという線虫の中間宿主であり、ヒトやイヌ、ネコ、タヌキ、キツネ、サルなんかに媒介するこが知られています。西日本、特に九州からの感染報告が多く、近年は東日本からも報告されています。日本における中間宿主としてはショウジョウバエ科Amiota属のマダラメマトイA. okadai 、オオマダラメマトイA. magna 、ナガタメマトイA. nagatai 、カッパメマトイA. kappa などが知られ、全てのメマトイ類が宿主となっているわけではないようです。

 症状について調べてみると、日本獸醫學雜誌 第28巻 学会号に面白い発表要旨が載っていました。「東洋眼虫Thelazia callipaedaの自己供試人工感染例について」という演題で、宮崎大の永田らは東洋眼虫を自分と奥さんの目に感染させその経過を観察しているのです。症状としては眼脂、異常感、異物感、濾胞、点状出血班などが出たそうですが、奥さんの方は全く何事もなかったそうです。他の寄生虫でも研究者が自らに寄生させてしまう話を聞いたことがありますが、自分で試してしまうところがなんとも好いですよね。巻き込まれる奥さんの方はたまったもんじゃないかもしれませんが。


 果たして、わたしが自身の目に東洋眼虫を飼い始めたら、濃密な時を共にして少しばかりの情というものがわいてくるのでしょうか・・・。そんなことになったらいつか報告したいと思います。
 
Amiota sp. ? , 2010, Yamanashi, Japan)
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テーマ:生き物 - ジャンル:写真

  1. 2010/12/19(日) 14:27:44|
  2. その他の旅

プロフィール

Takehiko Sato

Author:Takehiko Sato
写真家 佐藤岳彦

1983年 宮城県生まれ、東京都在住。
大学院(森林動物学)中退後、写真家の道へ。
傍らの自然から熱帯のジャングルまで、「密やかな野生」を軸に生命の織り成す世界を追いかけている。

2011年からは明治神宮の森を撮影し、写真集『生命の森 明治神宮』(講談社)や『ナショナルジオグラフィック』などで発表している。

キーワード
「生命、多様性、生死、つながり、生態系、細部、小さきもの、陰なるもの、見えにくいもの、見えないもの、得体の知れないもの、気配、密やかな野生」


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E-mail: mothnake@yahoo.co.jp


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写真集
生命の森 明治神宮」講談社より発売中。




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